儲かり草大好き欲深草

筆者:花咲か爺さん

これは笑いばなしです。

日本の園芸には「儲かり草」というグループに属する植物が多数存在し園芸の一分野として成立しています。 それを育てる「欲深草」という人たちがいることを ご存知ですか?

これは日本で古くからある園芸のスタイルの1つで、主に古典園芸植物と呼ばれる種類を中心に他とは異なる珍しい個体ばかりを好んで収集し栽培するというもので、その対象となる「儲かり草」は一般の園芸種とは価値の基準や鑑賞のポイントがかなり異なるため、この植物に興味のない人からすれば価格をはじめ楽しみ方など驚きが多く、理解しがたい不思議な園芸の世界です。しかし、昔から現在に至るまで熱烈な愛好家らによって支えられています。 ちなみに種類名を言うと私の専門のエビネやウチョウランのほか、春蘭、寒蘭、おもとの他、外国産も含めるとたくさんの種類があります。

見方によっては独特な趣のある品種群も多く、これらの植物が純粋に好きでその栽培を楽しんでる愛好家がたくさんいます。 しかし、業者と愛好家の境界が明瞭ではなく、高額で取引される品種もあり、時に投機の対象になり、増殖した株がこの両者の間を行き来することも少なくありません。そのため流通の過程での品違いが起こることや、遊ぶ金欲しさに騙すという人もいるとしばしば耳にします。このため「欲深草」の好む「儲かり草」と化しているのです。

この「儲かり草」は恐ろしい植物で、いったんその魔力にとりつかれてどっぷりはまってしまうと夢中になるあまり、善悪の見境がつかなくなってしまう人も多く、まるでマインドコントロールされたかのごとくに我を忘れてしまいます。 その結果、人間関係をぶち壊してまでも植物=「儲かり草」を優先してしまい、喧嘩したり、ひどい場合には盗みを働くなど、自らを「欲深草」と化してしまう人もいます。

実を言うと、私も若かりし頃巻き起こったバブル期にすっかりその世界にのめり込んでしまい、1本50万円、100万円もするアワチドリを買い、それをより高値で売った経験がある「欲深草」でした。しかし、私が救われていたのは遊ぶことよりも植物の方が好きだったため儲けたお金を遊びに使うことはせずに、収入のほぼすべてを植物の購入やそれに関連した物事=園芸に使っていたことです。

私の経験では、「欲深草」にも2種類のタイプがあり、1つは酒やギャンブルが好きで遊ぶ金欲しさで「儲かり草」を育てる「欲深草」で、もう一つは金銭よりも植物の方が好きで、増やしても売らない、あるいは売ったとしても収入のすべてが植物につぎこまれる「欲深草」です。 後者は、本当に植物が大好きだという人間が多いので一時は「儲かり草」に夢中な「欲深草」になったとしても、いずれは本来の植物好きな自分を取り戻せるはずです。

私は人間にとって花は人と人とをつなぎ、人間関係をスムーズにする潤滑剤のようなもので、植物はその仲立ちをしてくれる存在で、園芸はそれを可能にする行為だと信じています。私は園芸を通じて日本が「人善草」であふれることを願っています。

※「人善草(ひとよさそう)」…植物が大好きで、とても優しい人。 (詳しくは「欲深草にご用心」をご覧ください。)


「夢のある農業〜ドラマチック農業のすすめ〜」へ戻る

「自然人のコラム」へ戻る

ホームへ戻る