天から授かった梨 ?

'天の川' そして '二十世紀' 文 : 梅本清作

あなたは梨の品種名をいくつ知っておられますか 梨にも蘭花と同様に各品種には名前が付けられています。よくご存じの「幸水」、「豊水」 などがそれです。それでは、梨の品種名について少し興味ある話をしてみましょう。

古い品種で、「巾着」という品種名の梨があります。梨に大被害を与える黒星病が「巾着」 には発生しないことから、現在は梨の耐病性品種改良の素材として利用されている程度で すが、昔は主要品種の1つだったようです。「巾着」は当時の梨の中ではなんと言っても味 が良いことから、ついつい買ってしまうということで、つまり財布のひもが緩んでしまうことから「巾着」と名前が付けられたとのことです。

現在でも栽培されている晩生の梨に「新高」があります。この梨の品種名の由来は、当時新潟県で栽培されていた「天の川」と高知県で栽培されていた「今村秋」との交配によって出現した品種として、新潟県の新、高知県の高を組み合わせて新高と命名されました。しかし、「新高」にも後日談が有り、最近のDNA鑑定の結果では、「天の川」と「長十郎」 との交配によって出現したようです。 現在の主要品種には、水が付く品種が多いと思いませんか。「幸水」、「豊水」、「南木」な どです。水を付けた品種名の走りは「幸水」で、この品種があまりにも優れていたために、 それにあやかって品種名に水を付けたのでは無いかと思っています。

「二十世紀」は千葉県で偶然見つかった品種だと言うことをご存じでしょうか。現在の 松戸市で松戸覚之助という少年が1888年に裏庭にあるゴミ捨て場に生えていた梨の実生を 偶然発見しました。彼はそれを大切に管理し続けた結果10年後に豊円で形が良く、薄緑色 で美しく、食べると口にかすが残らず、今までにない甘くて多汁な果実ができました。この梨は、二十世紀に王座を成す梨になるだろうとの願いを込めて「二十世紀」と命名されました。その後「二十世紀」の主産地は鳥取県に移りましたが、二十世紀生誕を記念して松戸市には二十世紀が丘(にじっせいきがおか)」という地名の地区があります。また、「二十世紀」はその後の梨品種改良ではもてはやされ、現在の多くの主要品種は「二十世紀」 の血を引いています。


コラム筆者:梅本清作

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