園芸を極める [3]
植物を育てることは本当に楽しいの?
テレビや誌面で、園芸は「楽しい」と話している言葉をよく聞きます。しかし、具体的に何がどのように楽しいのかは、ほとんど聞いたことがありません。私はこの人たちの園芸が「楽しい」という言葉は、かなり無責任な言葉だと思います。楽しいと言う人たちの多くは花の小売り屋さんや園芸コメンテーター、または趣味家やコレクター等です。彼らは「自分は楽しい」というだけなので、さして花が好きではない人や、新たに花育てを始める人たちを説得することはできないでしょう。その証拠に、花育てをする人は増えず、減りつづけています。
私は、植物を育てている人の多くが、本当に楽しいと思って育てているわけではないのでは?と考えています。
私の場合を例に話すと、花育ては、楽しいことよりも大変なことの方が圧倒的に多いものです。けれど、一生懸命面倒を見た結果、立派な花芽を作ったり、つぼみをふくらませ、やがてたくさんの花を咲かせたりした時、とても嬉しい。日々は大変だけれども、生長の過程を見るのが好きです。そう、「好き」ということ。楽しいというよりも好きだからできるのです。
このため、別に植物が好きではない人、植物を育てたことがほとんどない人に、ただ「楽しい」と言うだけでは、その人たちを説得する言葉にはならず、もしかしたら「園芸って楽なのかな」という勘違いをさせてしまうこともあると思います。
植物を育てることはただ楽しい娯楽というよりも、育てている過程で多くのことを学び、そして立派に育った時に喜びを感じるものです。つまり、人の「こころを育てる」行為であると私は思います。
確かに他人が育てたものを部屋に飾り眺めるだけならば、楽しいでしょう。しかし、いくつもの植物を何年も上手に育てることは簡単ではなく、楽しいことよりも大変なことの方がはるかに多いのです。けれども立派に育った時の喜びは、言葉に言い表せないほど嬉しいものです。植物を育てることで責任感や思いやり、その他たくさんのことを生き物から学ぶことができる。それが園芸の究極ではないかと考えています。
園芸により、多くの人々がこころ豊かになれるように願っています。
コラム筆者:山本裕之