あ!イリオモテヤマネコ!

隊員 西尾、南條、山本

Photo: 関ちゃん

 西表島に到着した早々、ハブやサソリに遭遇し、更にヤマヒルに悩まされながら、小雨が降るジャングルの中を数日間さまよい歩いた私たちですが、その後、古見集落のかたすみにある林にテントをはり、ここを拠点にして密林の中に通うことにしました。翌朝、メシをかき込みすぐに出発。タコガタサギソウが点々と咲く草むらの中を通り、縦走路の入り口のぬかるみに来たとき「カシャッ」という音が聞こえ、すかさずその方向を振り向くと、そこには2台のカメラが見えました。その話はまた後で。

 ここから先は縦走路とはいっても、人がめったに通ることがない本格的なジャングルです。生い茂るシダをかき分けながら歩くこと1時間、かなりぬかるんだ急な上り坂に差し掛かったその時です。私たちの前20〜30メートルの草むらを右から左に横切るように、猛スピードで駆け抜けるぶちぶち模様の動物が見えました。「あ!イリオモテヤマネコ!!!」3人が同時に声をあげるとともに、10秒くらい密林の中へと姿を消すまで眺めていました。 初めて見たイリオモテヤマネコは想像していたよりもかなり小さく、都会で見る野良猫くらいの大きさで、ヒョウ柄模様が全身にあるだけで普通の猫と同じような姿でした。ただ、普通の猫よりもかなり身軽で、シダの葉の上を飛び跳ねるように物凄い速さで駆け抜けた姿を今でもはっきりと覚えています。

 後に動物好きの友人が言うには、餌付けをしていないイリオモテヤマネコに山中で出会えることは奇跡に近く、「お前ら幸運だったな」ということでした。

 先ほどのカメラのことですが、どうやら当時有名な動物写真家が、島で暮らす動物たちの姿を写すために仕掛けたもので、動くものを感知し自動でシャッターが切れる仕組みになっていました。様子からしてイリオモテヤマネコを撮る目的で設置してあったのだと思いますが、残念でしたね、M.Mカメラマンさん。写っていたのはイリオモテヤマネコではなく、私たち3人分の長靴だったでしょ?


 ちなみに、ここ西表島には多くの動物たちが暮らしていますが、イリオモテヤマネコとは別にヒョウのような大ヤマネコの目撃例が複数あるとのことで、幻の大ヤマネコ「ヤマピカリャー」という名前で知られています。夢がありますね。

Photo: 関ちゃん

コラム筆者:山本裕之

イラスト:M.Tajima

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