エビネの種類

エビネの仲間は日本や中国をはじめインド、オーストラリアなどを中心に分布し、200種類弱の原種があります。日本にはそのうち約20種が自生しています。複数の種類が同じ地域に自生しているところがあり、このような場所では異なる種どうしが互いに交配し、多くの雑種が生まれ、変化に富む様々な花がみられました。

このように色彩ゆたかな日本のエビネですが、世界的にはカランセ Calanthe と呼ばれています。「美しい花」という意味のギリシャ語がもとになり、実にふさわしい名前が付けられています。

日本で栽培されているものの多くは、ジエビネ・キエビネ・サルメンエビネ・ニオイエビネ・キリシマエビネの5種の原種とそれらの雑種で、春咲きエビネの系統です。この他に夏に咲くエビネも若干栽培されており、また洋ランとして知られている熱帯産の落葉タイプもいくつかが一部の植物園などで栽培されています。変化が少なくさらに温室が必要なため、一般には栽培されることはほとんどありません。

ここでは春咲きエビネについて解説します。現在、一般的に栽培されているものは、

1, ジエビネ (Cal.discolor)
2, キエビネ (Cal.siebildii あるいは storiata)
3, サルメンエビネ (Cal.tricarinata)
4, ニオイエビネ (Cal.izu-insularis)
5, キリシマエビネ (Cal.aristulifera)

の5つの原種とこれらが自然交配することで生じた自然雑種 (ヒゼン系、ヒゴ系、コオズ系、サツマ系など)、あるいは5つの原種をもとに人工的に交配して生まれた種類 (Cal.HizenCal.HigoCal.KozuCal.Satsuma) などです。5種類の原種についてはエビネの原種 (日本産)をご覧ください。

雑種について

日本では、複数の種類が同じ場所に自生している地域があり、互いに交配し合い多くの雑種を生じています。愛好家の間では外観から関係する原種を推測し、グループごとに分けられ、名称が付けられています。これらについてはいずれも見た目からの想像で、場合によっては種類の判断が人により異なることもあり、正確ではありません。最近は自然雑種をもとにして、更に人工的に交配した個体も多く作られ、複雑になり、正確な種類がいっそうわからなくなってきています。このためグループ名は付けずに、個体名だけを表示し、流通していることもよくあります。

愛好家の間で使われている雑種群とその名称は以下の通りです。

1, ヒゼン (ヒゼン系) = ジエビネとキリシマエビネが係わると推測される雑種群
2, ヒゴ (ヒゴ系) = キエビネとキリシマエビネが係わると推測される雑種群
3, サツマ (サツマ系) = ジエビネ、キエビネ、キリシマエビネの3種が係わると推測される雑種群
4, コオズ (コオズ系) = ジエビネとニオイエビネが係わると推測される雑種群
5, イシズチ (イシズチ系) = サルメンエビネとジエビネが係わると推測される雑種群
6, スイショウ (スイショウ系) = キリシマエビネとニオイエビネが係わると推測される雑種群
7, ミクラ (ミクラ系) = キリシマエビネ、ニオイエビネ、ジエビネの3種が係わると推測される雑種群

これらはいずれも見た目によるものなので、交雑が何世代も進んだものでは間違われることもあり、多くの問題がありました。

そこで、日本エビネ協会は、今後、健全な園芸種 (ラン) としてエビネが発展するには、世界の基準に合わせる必要があると考え、1996年から国際ラン登録局 (サンダースリスト Sander's List) への登録をはじめました。これによりシンビジュームやカトレアなどの洋ランと同様に原種から交配し、経緯が明らかな交配種に対し、交配種名 (グレッグス) が付けられるようになりました。世界的なラン展などで使われている正式なエビネの交配種名 (グレッグス) は以下の通りです。

1, Cal.Bicolor Cal.(discolor×sieboldii)
2, Cal.Hizen Cal.(discolor×aristulifera)
3, Cal.Satsuma Cal.(Bicolor×aristulifera)
4, Cal.Kozu Cal.(discolor×izu-insularis)
5, Cal.Inage Cal.(izu-insularis×Kozu)
6, Cal.Anagawa Cal.(discolor×Kozu)
7, Cal.Kasuga Cal.(izu-insularis×Bicolor)
8, Cal.Kokubu Cal.(discolor×Higo)
9, Cal.Miyuki Cal.(Higo×Kozu)

他に約100の登録があります。

これとは別に、植物の種類を表す場合に品種という言葉がよく使われます。園芸分類と植物分類との品種が異なるだけでなく、種名、交配種名 (グレッグス) に対して用いられることもよくあり、何を指しているのかが分かりにくく問題があります。花卉園芸のラン類に関しては、アワチドリ 'ジパング'、アワチドリ '白饅頭' (共に農水省登録) など、一部の特別な例 (種子固定の品種) を除き、個体 (個体名) のことを指すのが普通です。農水省の種苗登録の洋ランなどはそれにあたります。エビネでは各人が自由に個体名 (品種名) を付けて楽しむ習慣があり、付けられた名前が多くの人により認識されることで銘品と呼ばれるようになります。

園芸植物においては、単に品種と呼ぶよりも園芸品種、あるいは栽培品種、CVなどの言葉を用いると間違いは少なくなると思われます。


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